TOP日本NP学会誌日本NP学会誌 Vol.9 No.2(2025年12月)

日本NP学会誌ISSN 2432-0218

日本NP学会誌 Vol.9 No.2(2025年12月)

論文タイトル

【原著】 患者・家族への在宅療養移行支援における 診療看護師(NP)の役割 The role of nurse practitioners in supporting the transition to home care for patients and their families 石川倫子

内容

【目的】本研究は,患者・家族への在宅療養移行支援に関わっている診療看護師(NP)の実践から役割を明らかにする. 【方法】病院に勤務し在宅療養移行支援を実践している診療看護師(NP)8 名に半構成的面接法を行い,質的記述的に分析した. 【結果】在宅療養移行支援における診療看護師(NP)の役割は,【再入院をさせない】【患者・家族が症状を管理できるように導く】【在宅療養への目処をつける】【症状管理できる在宅療養支援体制を整える】【在宅で継続できる特定行為を実施する】【慣れるまで在宅に出向く】【訪問看護師と連携して症状マネジメントを行う】【患者に家族と最期まで向き合う】【在宅療養に向けてのチームの架け橋となる】【看護・介護スタッフの在宅療養移行支援の質向上に努める】であった. 【結論】診療看護師(NP)の役割の特徴は,①医学的な視点と生活の視点から在宅療養の見通しをつける,②患者・家族が在宅療養生活に慣れるまで療養継続のために症状マネジメントを行う,③在宅スタッフの症状アセスメントの質を高めることである.
Key Words: 診療看護師(NP),在宅療養移行支援,症状マネジメント,役割

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【原著】 熟練看護師の慢性心不全患者に対する 緩和ケア実践 Palliative Care for Patients with Chronic Heart Failure by Skilled Nurses 浅野実希・岩佐由美・齋藤雅子

内容

【目的】熟練看護師の慢性心不全患者への緩和ケア実践を明らかにすることを目的とした. 【対象と方法】循環器疾患患者の看護経験が 5 年以上の看護師を対象にインタビューを行い,慢性心不全患者の事例においてどのように緩和ケアを実践したか質問した.緩和ケア実践に焦点を当て文章をコード化した.類似コードをまとめカテゴリーを作成し名前をつけた. 【結果】4 名の看護師による 7 名の患者事例から,熟練看護師の緩和ケア実践の主要カテゴリーとして,①『緩和ケアに向けた働きかけ』,②『明確な目標をもとに判断する』,③『普段の様子から緩和ケアの必要性をのがさず捉える』,④『今後の緩和ケア提供における課題』,⑤『緩和ケアへの意見の違いを受け入れる』,⑥『次のケアにつながる感情』の 6 つが作成された. 【結論】主要カテゴリー①②③では,看護師は普段の様子から患者の変化をのがさず捉え,意図的な意思確認や,希望の実現に向けた働きかけをしていた.苦痛の除去と患者の思いを優先したい看護師の明確な目標に基づく,知識と経験,深い倫理観に支えられた実践であった.④⑤⑥は,緩和ケアの課題や,どうにかしたい,うまくいってよかったという実践に伴う感情で,次の緩和ケア実践につながる重要なものと考えられた.実践は診療看護師(NP)に必要とされる能力と共通した能力に基づいていた.緩和ケアの促進に向けて看護師の役割や実践を明確にする必要がある.
Key Words: 緩和ケア,心不全,熟練看護師,アドバンス・ケア・プランニング

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【研究報告】 診療看護師(NP)によるルーラルナースを 対象とした研修プログラムの作成の試み Training program for rural nurses developed by a nurse practitioner 酒井博崇・松田奈々・呉屋克磨

内容

【目的】医療資源や研修機会が不十分なへき地において,多様な役割を担うルーラルナースを対象とした診療看護師(NP)による効果的な研修プログラムを作成することとした. 【方法】へき地で活躍しているルーラルナースを対象に,研修に対する事前調査を行い,その結果を基に研修プログラムのプロトタイプを作成した.研修内容は,臨床推論,フィジカルアセスメント,急変時対応,超音波検査とし,それぞれ講義と演習を組み合わせて実施し,講師は診療看護師(NP)が担当した.研修終了後に質問紙調査とグループディスカッションを行い,プロトタイプの研修プログラムに対する受講生の評価を行い,その結果をもとに「ルーラルナースのための研修プログラム」を作成した. 【結果】受講者には「患者の状態を客観的に把握できるようになった」「医師との連携が円滑になった」「モチベーションが上がった」などの変化が見られ,診療看護師(NP)が企画・実施した研修は受講者から評価された.質問紙調査,グループディスカッションの結果等を基に,①実務に役立つ研修内容と研修形式で,②研修にアクセスしやすく定期的に開催でき,③ルーラルナースのコミュニケーション,ネットワークづくりに役立つ「ルーラルナースのための研修プログラム」を作成した. 【結論】診療看護師(NP)が,ルーラルナースに対する教育・研修を通して,へき地医療の質向上に貢献できることが示唆された.
Key Words: 診療看護師,ルーラルナース,へき地,研修プログラム

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【研究報告】 診療看護師(NP)主導の院内糖尿病チームが 介入の迅速化と血糖管理に与える影響: 後ろ向き前後比較研究 Impact of an In-Hospital Diabetes Team Led by Nurse Practitioners on Timeliness of Intervention and Glycemic Control: A Retrospective Before-and-After Study 廣瀬久美

内容

【目的】本研究の目的は,診療看護師(NP)主導による院内糖尿病チームの導入が,糖尿病患者の治療プロセス(介入の迅速性)と臨床アウトカム(血糖コントロール)に与える影響を検証することである. 【方法】本研究は後ろ向き前後比較調査である.診療看護師(NP)主導チーム導入後の2020年6月から8月の介入群33名と,導入前の2019年6月から8月の非介入群34名を比較した.主要評価項目は,介入開始までの期間,介入期間,入院時および退院前の空腹時血糖値(FBS)とした.統計解析にはフィッシャーの正確確率検定やマンホイットニーのU検定を用いた.統計的有意水準はP<0.05とした. 【結果】介入群では,非介入群と比較して介入開始までの期間が短縮し,介入期間は延長した(ともにP<0.001).入院時のFBS中央値は介入群の方が高かったが(211 vs. 156mg/dL, P=0.020),退院時には両群間で差は認められなかった(127 vs. 131mg/dL, P=0.851). 【結論】診療看護師(NP)主導の院内糖尿病チームの導入は,糖尿病患者への介入を迅速化させるとともに,入院時血糖値が高い症例においても効果的な血糖管理に貢献することが示唆された.
Key Words: 診療看護師,糖尿病管理,院内糖尿病チーム,血糖コントロール,治療プロセス

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【研究報告】 診療看護師(NP)の末梢挿入式中心静脈 カテーテル(PICC)挿入における 看護援助に関する質的研究 A Qualitative Study of Nursing Assistance Provided by Nurse Practitioners in Peripherally Inserted Central Catheter Insertion 入野虎義・佐藤真由美

内容

【目的】診療看護師(NP)の末梢挿入式中心静脈カテーテル(以下,PICC)挿入における看護援助の現状について明らかにする. 【方法】対象者は,PICC 挿入の経験を有する診療看護師(NP)10 名とした.データ収集は,インタビューガイドを用いた半構造化面接調査によって行った.収集したデータは,PICC 挿入における看護援助の現状を質的記述的に分析した. 【結果】診療看護師(NP)10 名が本研究に参加し,7 つのカテゴリーが抽出された.【医学・看護学的視点に基づくPICC 挿入前の総合的リスク評価と生活への配慮】【不安軽減に向けた個別性のある説明と意思決定支援】【PICC挿入中における安楽の支援と安心感を高める関り】【PICC 挿入後における患者の心理的安定への配慮と治療経過に応じた適切な対応】【PICC 挿入における多職種との協働と連携体制の構築】【PICC 挿入に関する研修医・看護師への実践的教育支援】【PICC 使用に関する医療者教育と実践課題】であった. 【結論】診療看護師(NP)による PICC 挿入の看護援助は,医学的視点と看護学的視点を統合した実践であり,リスク評価,患者支援,多職種との連携,教育的役割が求められていることが明らかとなった.これらの知見は,今後の看護実践と教育支援体制の充実に資する基盤を提供するものである.
Key Words: 診療看護師(NP),Nurse Practitioner,末挿入式中心静脈カテーテル,Peripherally Insertedcentral catheter,看護援助

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【研究報告】 日本における診療看護師(NP)による 末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC) 挿入に関する文献検討 A Literature Review of Peripherally Inserted Central Catheter Insertion by Nurse Practitioners in Japan 入野虎義・佐藤真由美

内容

【目的】日本における診療看護師(NP)の末梢挿入式中心静脈カテーテル(Peripherally Inserted Central Catheter; 以下,PICC)挿入に関する報告を概観し,研究の動向について明らかにする. 【方法】データベースは医中誌パーソナルWeb版を用いた.特定行為に係る看護師の研修制度が開始された2015年から2024年の約9年間で,キーワードは診療看護師(NP),特定行為,末梢挿入式中心静脈カテーテル,末梢挿入型中心静脈カテーテル,PICC, Peripherally inserted central catheterとした.文献のタイトル・要旨を概観し,会議録や解説など研究論文ではない文献を分析対象から除外し,診療看護師(NP)のPICCに関する研究論文10件を分析対象とした. 【結果】診療看護師(NP)のPICCに関する研究の動向について,2015年から2024年までに10件が報告されていた.診療看護師(NP)のPICC挿入の教育に関すること2件,PICC挿入の安全性に関すること8件に分類された. 【結論】診療看護師(NP)のPICC挿入に関する研究は,安全性に関する報告が多く,教育に関する研究は限られていた.今後は,安全性の確保に加え,PICC挿入に関する継続教育や看護実践の視点からの研究の研究が求められる.
Key Words: 診療看護師(NP),Nurse Practitioner,末梢挿入式中心静脈カテーテル,Peripherally Inserted central catheter,看護実践

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【症例報告】 診療看護師(NP)による腹部超音波検査で 早期治療介入できた小児患者の腸重積症の1例 A case of intussusception with early therapeutic intervention by a pediatric nurse practitioner (NP) with abdominal ultrasound examination. 大石直之・近藤寛・鈴木亮博・市ノ川隆久・佐藤あゆみ・藤原卓也・金田明子

内容

小児領域の診療看護師(NP)による腹部超音波検査で早期治療介入できた症例を報告する. 【症例】4歳,男児.腸重積症を整復後に入院となった.入院後は腹痛なく経過していたが,6時間後に間歇的腹痛とDance徴候を認めたため診療看護師(NP)が腹部超音波検査を行うと,右季肋部にtarget signを認めた.腸重積症の再発と判断し当直医師と非観血的整復を行ったが,整復困難であり外科的対応が考慮されたため高次医療施設へ転院となった. 【考察】腸重積症は,腸管の循環障害を伴う腸閉塞症の代表疾患であり,1歳未満の乳児に多く認める.診療看護師(NP)は,身体所見から腸重積症の再燃を疑い,腹部超音波検査を行うことで早期治療介入につなぎ効果的であった. 【結論】非侵襲的な超音波検査は小児にとって苦痛が少なく,タイムリーに関わることの多い診療看護師(NP)は,身体診察に加えて超音波検査を使用することは効果的である.
Key Words: 小児,診療看護師(NP),身体診察,超音波検査,腸重積

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【症例報告】 2型糖尿病への支援が不足する環境における 診療看護師(NP)の診療実践 Nurse Practitioners’ Practice in Environment with Insufficient Support for Type 2 Diabetes 小岩大介・三浦絵美梨・森一直・奥村将年・片桐美奈子・ 山田祐一郎・茂木幹雄・松山克彦・神谷英紀

内容

糖尿病は世界的に深刻な健康問題で,推定 5 億 3,300 万人が罹患し,2045 年までに 7 億 8,300 万人に達すると予想されている.多くの合併症を引き起こす慢性疾患であり,治療継続には自己効力感や動機,技能,知識,自信の向上を伴う患者の自己管理が不可欠だが,そのためには医療者による適切な支援が必要である.また,日本では高齢化に伴い認知症が増加し,自己管理困難な糖尿病患者が増えている.しかし,糖尿病診療を担う専門職の人材が不足し,全ての患者に十分な支援を提供することが困難な現状がある.加えて,糖尿病専門外来や病棟以外で療養する患者に対し,専門的な支援が十分に行き届かない場面も少なくない.本稿では,糖尿病以外を主病態とし,糖尿病に対して専門的な支援が十分に行き届かない環境で療養する 2 型糖尿病の 3 症例に,診療看護師(NP)が主体となって病態や生活を踏まえた薬剤調整,食事・運動療法の支援,療養環境調整,退院支援などを実施したことを報告する.診療看護師(NP)は,糖尿病未指摘・未治療や他疾患を主とする患者にも柔軟に対応しうる点が特徴であり,リソースが限られた環境においても,多職種と連携しながら個別性に応じた継続的ケアを提供することで,治療アドヒアランス向上と治療効果の最大化に寄与し得る.
本 3 症例を通じて,診療看護師(NP)は糖尿病診療においても有効性を示し,チーム医療を補完し得る可能性が示唆された.
Key Words: 2 型糖尿病,診療看護師(NP),多職種協働

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