TOP日本NP学会誌日本NP学会誌 Vol.9 No.1(2025年5月)

日本NP学会誌ISSN 2432-0218

日本NP学会誌 Vol.9 No.1(2025年5月)

論文タイトル

診療看護師(NP)による 麻酔管理でのPONVについて ―麻酔科医との比較 ― Comparison of Postoperative Nausea and Vomiting Incidence between Nurse Practitioners and Anesthesiologists  川村知也・安村里絵

内容

【目的】
診療看護師(NP)が様々な形で周術期麻酔関連業務に関与し,タスクシフトがすすむようになったが,術中麻酔管理における診療看護師(NP)と医師を比較した研究は少ない.術後悪心・嘔吐(Postoperative nausea and vomiting: PONV)は術後疼痛と並んで,最も一般的な周術期合併症である.PONVの発生数と術後の制吐剤使用について診療看護師(NP)と医師を比較した.
【対象と方法】
2021年4月1日から2022年3月31日に全身麻酔を施行した20歳以上の患者を対象とした.診療看護師(NP)群679症例,医師群693症例を後方視的に調査し比較検討した.
【結果】
PONVの発生数は診療看護師(NP)234症例(34.5%),医師198症例(28.6%)と診療看護師(NP)のほうがPONVの発生数が有意に多かった(p=0.019).術後の制吐剤使用は診療看護師(NP)181症例,医師175症例と有意差は認めなかった(p=0.513).Apfel score・性別・手術時間・麻酔時間・輸液量・術後オピオイド使用に有意差を認めた.
【結論】
診療看護師(NP)群は医師群と比較し,PONVの発生数が多かったが,術中の麻酔管理以外の因子が多く影響していた.また,術後の制吐剤使用には有意差はなかったことから薬剤投与が必要なPONVの増加はないと考える.
Key Words:診療看護師(NP),タスクシフト,術後嘔気・嘔吐,制吐剤使用

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論文タイトル

組織横断的に活動する診療看護師(NP)に 対する医療者の認知度と満足度 ―看護師,医師およびメディカルスタッフを対象としたアンケート調査 ― Healthcare providers’ awareness and satisfaction with Nurse Practitioners working across organizations -Survey of nurses, doctors and medical staff  服部貴夫・山中真

内容

【背景】
チーム医療は,各専門職が互いに連携し的確な医療を提供し,結果,医療者の満足度を向上させることが知られている.患者の満足度は医療者の満足度と相関関係にあると言われているが,本邦の診療看護師(NP)は少数であり,未だ社会的認知度も低い.その為,当該施設の診療看護師(NP)の活動により,医療者の認知度が満足度に影響を及ぼしているのかを明らかにすることを目的とした.
【方法】
2023年4月1日から5月31日に対象施設の看護師,医師およびメディカルスタッフを対象に無記名方式Webアンケートを実施した.分析方法は,因子探索型因子分析で各質問の関連性について解析を実施した.その後,抽出因子毎に一元配置分散分析による平均値比較を行い,分散の均一性はBartlett検定で確認した.一元配置分散分析で有意であった場合は,Mann-Whitney U検定を実施した.
【結果】
看護師の診療看護師(NP)に対する満足度の探索的因子分析により得られた因子「包括的アセスメント・マネジメント能力」では,認知レベルが高い群が低い群より満足度が高かった(p<0.01).
【結論】
診療看護師(NP)に対する「包括的アセスメント・マネジメント能力」「チームワーク・協働能力」「教育能力」といった因子は,看護師の満足度に関連し,認知度が高いほど看護師の満足度は向上することが示された.
Key Words:診療看護師(NP),認知度,満足度

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論文タイトル

呼吸器外科における診療看護師(NP)の タスクシフト・シェアに向けた現状報告  Nurse Practitioner (NP) in Thoracic Surgery of Current Status Report on Task Shifting and Sharing  長谷部亮・高森聡・中塚真里那・遠藤誠

内容

【目的】
外科領域の中でも専門性の高い呼吸器外科に従事する診療看護師(NP)の活動報告はなく,業務軽減効果は明らかではない.本報告の目的は,A病院呼吸器外科に配属された診療看護師(NP)および医師業務に与える影響を明らかにする事である.
【方法】
2022年5月から呼吸器外科(医師数3名)に診療看護師(NP)1名が専従し活動を開始した.調査期間は2022年5月~2023年3月の11か月間.専従診療看護師(NP)の業務内容を病棟業務,外来関連業務,手術関連業務,自己研鑽の4つに分類して活動の詳細,従事時間,回数を記録し,それぞれの割合を調査した.
【結果】
業務の内訳は,病棟34%(検査評価,胸腔ドレーン管理,退院調整等),外来27%(入院時サマリ作成,COVID-19検査等),手術20%(創処置,スコピスト,鈎引き等),自己研鑽19%(文献検索,発表準備等)で,合計100%を占めた.これらの業務のうち,特定行為が占める割合は病棟2%,外来4%であった.1か月20日間,外来12日として計算すると,診療看護師(NP)は医師1人あたり,病棟業務が1日2時間,外来業務が1日2.9時間分の業務を担当していた.
【結語】
呼吸器外科での診療看護師(NP)の役割とタスクシフト,シェアの実態が示された.医師の管理下で自律した相対的医行為と多職種の円滑な業務の遂行に貢献できる診療看護師(NP)は呼吸器外科においても業務軽減効果が認められ,タスクシフト,シェアに有用と考えられた.
Key Words:診療看護師(NP),呼吸器外科,タスクシフト,シェア,特定行為

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論文タイトル

プライマリケア領域における診療看護師(NP) による高齢者糖尿病の服薬マネジメントの一例  A case of medication management of diabetes in an older adult by Nurse Practitioner in primary  吉家直子

内容

【緒言】
高齢者は多剤併用となりやすく,薬物有害事象や服薬アドヒアランスの低下,薬剤費増大などの問題がある.今回,診療看護師(NP)が訪問看護師として高齢者糖尿病患者の服薬マネジメントを実践し,服薬アドヒアランスおよび生活の質向上に繋がった症例を報告する.本症例を通して,高齢者糖尿病の服薬マネジメントにおける診療看護師(NP)の役割について考察する.
【対象と方法】
数十年来の糖尿病歴をもつ80代女性.一年程前から血糖コントロール不良となり,HbA1cは悪化していた.診療看護師(NP)は服薬マネジメントが必要であると判断し,包括的アセスメントと薬剤総合評価を実施し問題点を抽出した.
【結果】
薬剤調整後HbA1cは改善した.服薬用法の簡素化と,家族を含めた多職種連携による強化によって,服薬の飲み忘れがなくなり,安全かつ適切な薬物療法が継続された.
【結論】
診療看護師(NP)による包括的アセスメントと薬剤総合評価は,認知機能低下を伴う高齢者糖尿病患者の生活の質向上に寄与したと考えられる.本症例は,プライマリケア領域における診療看護師(NP)の役割拡大と多職種連携の重要性を示すものである.ただし,単一症例に基づくため,結果の一般化には限界がある.
Key Words:高齢者,服薬マネジメント,診療看護師(NP),薬剤総合評価,多職種連携

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末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)の 先端位置の移動によって カテーテル抜去困難をきたした1例  A case of difficulty in removing a peripherally inserted central catheter (PICC) caused by movement of the catheter tip position to peripheral side  国島正義・竹田明希子・岩崎泰昌

内容

【はじめに】
末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)挿入は看護師特定行為として行われるようになり,合併症対策は十分に行われる必要がある.今回PICCのカテーテル先端異常により抜去困難および静脈炎をきたした症例を経験したので報告する.
【症例】
75歳女性.左足趾の壊死に対し左示趾中足趾節関節離断術を施行された.術後19日目に末梢静脈路確保が困難となり,右上腕へPICCを挿入した.PICC挿入後から7日間はヘパリン加生食水でカテーテルをロックして管理され,その後高カロリー輸液の持続投与が開始された.術後42日目に右上腕の蜂窩織炎疑いのためPICCを抜去しようとしたところ,途中でカテーテルに抵抗が生じ抜去困難となった.レントゲンでカテーテルの状態を確認したところ,カテーテルは皮下でとぐろを巻き,先端は上腕部にあった.安全に抜去するため,透視下でガイドワイヤーをカテーテルに通し,ガイドワイヤーごとカテーテルを牽引することで抜去できた.
【考察】
カテーテル先端位置異常をきたした要因は,注射薬の注入圧および体動によってカテーテル先端位置が変わったと考える.また,右上腕の蜂窩織炎が疑われたが,カテーテル先端が腋窩静脈周辺の状態で高カロリー輸液を投与したことにより静脈炎が生じたと考える.
【結論】
カテーテル先端位置異常は早期および遅発ともに起こりうる合併症であるため,PICC挿入している間の画像はカテーテル先端位置も併せて確認すべきである.
Key Words:末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC),カテーテル先端位置異常,静脈炎,カテーテル抜去困難

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