TOP日本NP学会誌日本NP学会誌 Vol.7 No.2(2023年10月)

日本NP学会誌ISSN 2432-0218

日本NP学会誌 Vol.7 No.2(2023年10月)

論文タイトル

診療看護師(NP)の導入による医師の 働き方改革と病院経営への有効性の検討  Assessment of Hospital Management Efficiency by Adding Japanese Nurse Practitioners to a Hospital’s Staff  大城智哉・三重野雅裕・御船曜・柴田英貴・大野浩平・松井伸朗・村井紀元・星野光典・ 福島元彦

内容

【緒言】
昨今,医師の働き方改革に伴い,多職種へのタスクシェアリングが重要視されており,中でも診療看護師(NP)導入の有用性が注目されている.当院における診療看護師(NP)の導入効果と病院経営への影響を調査した.
【方法】
対象施設は,2017年より消化器センター(以下:外科)所属診療看護師(NP)が採用開始となり,2018年より3名の診療看護師(NP)が外科に所属している.調査期間は,診療看護師(NP)導入前の2016年4月-2017年3月(以下:医師群)と診療看護師(NP)導入後の2018年4月-2019年3月(以下:診療看護師(NP)導入群)とし,主要評価項目は入院件数,外科入院総収入,手術診療保険点数,看護師総時間外労働,外科医総時間外労働,手術件数とし,後方視的に比較検討した.
【結果】
手術件数は診療看護師(NP)導入群で有意に増加し[33.5人(29.75-36)対 診療看護師(NP)導入群41.5人(36.75-47.25)(p<0.05)][中央値(四分位範囲)],診療看護師(NP)は手術助手として28.8%に介入していた.外科の入院総収入は診療看護師(NP)導入群で約130%増加し,手術診療保険点数は診療看護師(NP)導入群で有意に増加した[1,156千点(1,118-1,351)対 1,758千点(1,438-1,874)(p<0.05)].外科医総時間外労働に有意差は認めなかったが[医師群152.5時間(109-167)対 診療看護師(NP)導入群162.5時間(140-177)(p=0.160)],看護師総時間外労働は診療看護師(NP)導入群で有意に減少した[医師群365.6時間(323-380)対 診療看護師(NP)導入群311.5時間(237-342.5)(p<0.05).
【結論】
診療看護師(NP)が病棟管理や手術助手を行うことで,医師の業務負担軽減に寄与したと考えられる.また,医師不在時にも診療看護師(NP)が病棟マネジメントを行うことで,病棟看護師の時間外労働短縮に繋がる可能性があり,病院運営にも有効である事が示唆された.
Key Words:診療看護師(NP),外科,医師の働き方改革,病院経営への影響

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論文タイトル

訪問看護師が診療看護師(NP)資格認定を 受けたことによる活動および役割の変化  ―訪問看護師自身の認識を通して ― Exploring the factors that influence the practices and roles for a home-visit nurse practitioner (NP) transitioning from a nurse.  西澤亜紀子・松下由美子

内容

【目的】
訪問看護師が診療看護師(NP)資格認定を受けたことにより,自身の活動と役割にどのような変化があったと認識しているかを明らかにする.
【対象と方法】
訪問看護師が診療看護師(NP)資格認定を受けた後,さらに訪問看護師として活動している2名を対象として半構造化面接を行い,質的記述的分析を行った.本研究は佐久大学研究倫理委員会の承認を得た.
【結果】
診療看護師(NP)資格認定による訪問看護師の活動の変化に関する認識は,4つのコアカテゴリーで構成されており,《利用者の療養生活の質向上のために高度実践力を発揮》,《見聞や人脈の広がりによる活動範囲や機会の拡大》,《訪問看護人材の育成力の向上》,《訪問看護師としての自信の喪失と回復》であった.役割の変化に関する認識は,《施設内における役割の変化》,《他施設からの相談に応じる役割発揮と相談体制の構築》,《地域での役割拡大》,《看護専門職を育て,職能を発展させる役割の拡大》の4つのコアカテゴリーで構成されていた.
【考察】
診療看護師(NP)資格認定を受けた訪問看護師は,大学院教育で得た高度実践力と見聞・人脈の広がりを在宅療養者の生活の質向上のために活用し,多職種協働における中心的役割,在宅医療の質向上のためのリーダー的役割,看護専門職育成の指導者的役割などを務め,施設内から施設外,地域へと役割を拡大していた.
Key Words:診療看護師(NP),訪問看護師,活動,役割,変化

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診療看護師(NP)とレジデント単独での 入院中の担当患者における入院期間の比較検討 Japanese Nurse practitioners effectively compared residents for the length of hospital stay. 井手上龍児・高橋淳・福添恵寿・青柳美佳・本郷葉子・大垣美千代・斎藤岳史

内容

【背景】
主に米国におけるNurse Practitionerは,レジデントが施した医療と比較し,死亡率などのハードアウトカムにおいて遜色が無いと言われている.本邦でも,米国NPのような医療体制を法的範囲内で施行している施設があるが,それらの有用性は不明である.また,一般病棟患者のマネジメントとして,レジデントとNPでは,入院期間に関するデータは明らかではない.
【方法】
2016年4月から8月に,対象施設A病棟を退院した患者で,診療看護師(NP)が受け持つ患者とレジデント受け持ち患者の入院期間を診療録より後方視的に収集し比較した.収集した項目は,年齢・性別・入退院日・点滴施行の有無,抗菌薬使用の有無・診断大分類・退院時転帰とした.統計学的検定は,Kaplan-Meier曲線を作成し,Log-rank検定を行った.
【結果】
期間中の対象患者は,123症例で診療看護師(NP)受け持ち症例が27症例(男性18)レジデント受け持ち症例が96症例(男性54)であった.入院期間の中央値は診療看護師(NP)群が11(95%Confidence Interval [CI]; 6-14)日,レジデント群が11(95%CI; 6-14)日,P=0.689であった.
【結論】
対象施設において,診療看護師(NP)が管理した患者では,レジデントが管理した群と比較し,入院期間の検討では有意差はみられなかった.
Key Words:診療看護師(NP),レジデント,入院期間

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論文タイトル

診療看護師(NP)のトランジションの様相  Aspects of Transitions for Nurse practitioner  渡部秀悟・黒澤昌洋・山中真・泉雅之・阿部恵子

内容

【目的】
診療看護師(NP)のトランジションの様相を明らかにする.
【方法】
診療看護師(NP)として5年目以上の臨床経験を有する3名に,インタビューガイドを用いた半構造化面接を行った.面接内容は,逐語禄化し,質的記述的研究手法を用いて分析を行った.
【結果】
診療看護師(NP)のトランジションの様相は,「看護師を目指す時期」から「診療看護師(NP)時代」へと役割移行を伴うものであり,20のカテゴリー,70のサブカテゴリーで構成されていた.看護師を目指す時期では,必ずしも看護に関心があったわけではなかったが,看護学生時代に看護への関心や看護観が芽生え始めていた.看護師時代は,患者・家族との関わりと環境によって看護観と看護師像が形づくられ,患者のために深めたい知識・技術と看護のスペシャリティへの思いにより,診療看護師(NP)の選択に至っていた.大学院生時代は,診療看護師(NP)の役割をイメージし,診療看護師(NP)の実践は看護を基盤としていると認識していた.診療看護師(NP)時代は,全人的ケアと高度実践看護の提供の模索や,多職種連携・臨床教育・臨床実践拡大に向けた組織への働きかけを行っていた一方で,ドロップアウトの可能性も示唆された.
【結論】
診療看護師(NP)のトランジションの様相は,看護師時代に形作られた看護観や看護師像の影響を受けていた.また,全人的ケアと高度実践看護の提供を模索するプロセスを示していた.そして,診療看護師(NP)は高度実践看護師のコンピテンシー獲得を行っていた.
Key Words:診療看護師(NP),Nurse Practitioner,トランジション,役割移行

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論文タイトル

診療看護師(NP)が消化器外科の リハビリテーションの運用に介入した効果  Effects of Interventions by a Nurse Practitioner for Rehabilitation Management in a Department of Gastroenterological Surgery  笹島絵理子・中野千春・末永雅也・関口健一・廣田加純・ 安形直之・丸野ゆかり・片岡政人・竹田伸

内容

【目的】
診療看護師(NP)が消化器外科のリハビリテーション(以下,リハ)の運用に介入した効果を明らかにする.
【方法】
2018年4月から2021年3月の期間で,診療看護師(NP)が介入する前の2019年3月まで(以下,介入前)と診療看護師(NP)が介入した2019年4月以降(以下,介入後)の消化器外科に入院した患者を対象にリハの有無や術後在院日数を含む診療看護師(NP)介入の効果を後ろ向きに検討した.
【結果】
全3,444例の消化器外科に入院した患者を検討した.リハ処方件数は,介入後の2020年度は1.65倍へと増加した.リハ料の年間収益は,介入後の2020年度は1.48倍へと増加した.リハ処方のある手術患者の術後在院日数の中央値は介入前の19日から介入後の2020年度は13日へと短縮した(P<0.001).また,がん患者に限定した場合は,術後在院日数が介入前の16日から介入後の2020年度には12日へと短縮した(P<0.01).
【結論】
診療看護師(NP)がリハの運用に加わることで,チーム医療が促進され,新たな資材を費やすことなく,術後在院日数の短縮とリハ収益の増加が得られ,患者と施設の両方への貢献に繋がった.
Key Words:診療看護師(NP),チーム医療,術後在院日数,リハビリテーション料

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論文タイトル

A病院における小児へのPICC挿入と 管理上の課題  PICC insertion and management issues in children at Hospital A  大石直之・高野政子・草野淳子

内容

【目的】
「特定行為に係る看護師の研修制度」に「末梢留置型中心静脈注射用カテーテル(PICC)の挿入」があるが,小児診療看護師(NP)が実践した報告はない.本研究の目的は,A病院における小児へのPICC挿入や管理の実態を明らかにすることである.
【方法】
調査は2021年3月に実施した.調査対象は2016年から2020年にA病院に入院した小児の電子カルテを後方視的に調査した.
【結果】
対象者は66例.挿入目的はTPN56例(84.8%)と末梢静脈路確保10例(15.2%)であった.疾患別分類は,炎症性腸疾患が32例(48.5%),消化器疾患が20例(30.3%)と脳疾患が4例(6.1%)等であった.PICCの種類は太径PICCが42例(63.6%),細径PICCが24例(36.4%)で,太径PICCは主に肘に留置していた.PICCの目的達成状況は,目的達成抜去は27例(40.9%),未達成抜去が36例(54.5%)等であった.カテーテル抜去理由は発熱(41.7%)が最多であった.年齢別でPICC留置時の「腫脹」と「閉塞」に有意差を認めた(p<0.05).感染を起こしたカテーテルの種類は,太径PICCが6例(75%),細径PICCが2例(25%)であった.原因菌は,全て皮膚の常在菌であった.
【結論】
小児への上腕PICC留置も可能であるが,処置前にはプリパレーションを行い不安の軽減を図ることが必要である.カテーテル関連血流感染は,他の小児領域の実態報告より多かった.A病院の感染予防の視点からカテーテル管理について見直す必要がある.
Key Words:小児,PICC,診療看護師,点滴管理

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コロナ禍での授業スケジュール変更に伴う教員による 学修効果の評価と大学院生による授業評価の検討 ―対面授業と対面-オンライン導入授業との比較― Faculty and graduate student evaluations of teaching mode during the COVID-19 pandemic  泉雅之・橋本茜・阿部恵子・森一直・黒澤昌洋

内容

【目的】
2019年末からの新型コロナウイルス感染症の拡大による危機的状況(コロナ禍)により,愛知医科大学では感染拡大防止のために2020年4月よりオンライン授業が導入された.今回,この授業スケジュール変更に伴う教員による学修効果の評価と大学院生による授業評価を検討した.
【方法】
コロナ禍以前の2019年度,コロナ禍1年目の2020年度,2年目の2021年度に在籍していた19人を対象とした.学修効果は教員による臨床推論と疾病特論の最終評価(100点満点)を取り上げ,同時に大学院生による授業評価アンケート(10項目,各5点満点)の結果を検討した.
【結果】
教員の最終評価の平均点は,臨床推論:2019年度79.6点,2020年度77.0点,2021年度80.5点,疾病特論:2019年度71.6点,2020年度76.1点,2021年度73.7点であった.大学院生の授業評価アンケートの平均点は,臨床推論:2019年度4.88点,2020年度4.05点,2021年度4.90点,疾病特論:2019年度4.75点,2020年度3.85点,2021年度4.14点であった.オンライン授業の割合は臨床推論:2020年度42.9%,2021年度12.0%,疾病特論:2020年度50.0%,2021年度41.3%であった.
【結論】
コロナ禍2年目は,大学院生の授業評価が上がっていた.教員,大学院生ともにオンライン授業形態への慣れや,オンライン授業の割合が減少していたことが要因として考えられた.
Key Words:コロナ禍,オンライン授業,対面授業,学修効果,大学院生

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