末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)の 先端が縦隔内に迷入した1例 A Case of Peripherally Inserted Central Venous Catheter (PICC) Tip Straying into the Mediastinum 大平志帆・廣末美幸・松田奈々・伊藤智佳子・田島康介
末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)が縦隔内に迷入した症例を報告する.
【症例】
62歳,女性.尿路感染症誘因と考えられる敗血症性ショックでの集中治療室へ入院となった.入室後,左上腕よりPICC挿入を行ったが,翌日に頻脈と血圧低下を認め,画像検査にて大量の右胸腔内液貯留ならびにPICC先端付近の気腫を認め,静脈穿破が疑われた.胸腔穿刺液に高濃度の糖を認め輸液の胸腔内漏出と考えら
れた.
【考察】
PICCは中心静脈カテーテル(CV)に比して気胸や血管損傷などの致死的合併症は少ないとされるが,静脈炎や先端位置異常は逆に多いと報告されている.本例では逆流血の吸引が不能であった.これは,留置した静脈内からのカテーテル先端の逸脱の可能性を示唆していると考えられた.
【結論】
CVに比して比較的安全と言われるPICCであっても,重大な合併症を起こし得るリスクがあることを認識する必要がある.また,逆流血の吸引が不能となった場合は,PICCの再挿入を検討すべきである.
Key Words:末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC),静脈穿破,先端位置異常,縦隔,合併症
診療看護師(NP)のバーンアウトに 影響を与える要因分析 An Analysis of Factors Affecting Burnout in Nurse Practitioner (NPs) 宮田真澄・橋本茜・黒澤昌洋・泉雅之・荻野朋子・谷口千枝
【目的】
診療看護師(NP)のバーンアウトの現状把握を行い,診療看護師(NP)のバーンアウトに影響を与える要因を明らかにする.
【方法】
診療看護師(NP)320名に対し,無記名自記式質問紙調査をWebで実施した.バーンアウトの影響要因を,性別,所属施設の研修制度の有無,所属施設の診療看護師(NP)数,悩みを相談できる存在の有無,良いアウトカムを出せているかを説明変数とし,多変量ロジスティック回帰分析を行った.
【結果】
回答者は85名(回収率26%).31%(18名)が,バーンアウト基準に該当した.目的変数が疲弊感の場合,男性より女性は高く(OR: 6.36,95%CI: 1.82-22.3),研修制度が無い施設の者は,ある者より高かった(OR: 5.32,95%CI: 1.35-21.0).シニシズムでは,男性より女性が高く(OR: 5.53,95%CI: 1.49-20.5),相談者がいない者は,いる者より高かった(OR: 7.1,95%CI: 1.86-27.2).アウトカムを出せていない者は,出せている者より高かった(OR: 5.05,95%CI: 1.35-18.9).職務効力感では,アウトカムを出せていない者は,出せている者より低かった(OR: 6.16,95%CI: 2.06-18.5).
【結論】
バーンアウト基準を満たした診療看護師(NP)は18名(31%)であった.バーンアウトの特徴として,職務効力感が低かった.診療看護師(NP)のバーンアウトには性別,所属施設の研修制度の有無,所属施設の診療看護師(NP)数,悩みを相談できる存在の有無,良いアウトカムを出せているかが影響すると示唆された.
Key Words:診療看護師(NP),バーンアウト,影響要因
小児がん患児に関わる 診療看護師(NP)の実践と役割 ―海外の文献検討を通して― A Literature Review of the Nursing Practices and Roles of Pediatric Nurse Practitioners for Children with Cancer 新家勇希・草野淳子・足立綾・井原健二
【目的】
海外のNurse Practitionerの小児がん患者への活動の実践と役割を明らかにすることを目的とする.それにより,日本の小児がん患者のケアにおける診療看護師(NP)としての役割を検討していく.
【方法】
CINAHL with Full TextとPub Medを用いて,1995年~2021年の海外文献を検索し,7文献を抽出した.文献から,Nurse Practitionerの小児がん患者におこなった実践に該当する記述箇所を抽出し,コードとした.抽出したコードをもとに,2名の小児看護研究者とともに分析し,サブカテゴリーおよびカテゴリーを作成した.
【結果】
分析の結果,【化学療法に関連した薬剤投与を実施する】【化学療法に関連した診療行為を実施する】【小児がん患者へのケアの提供を実施する】【患者の症状の判断を行い,治療を選択する】【小児がん治療に関連した教育的な関わりを実施する】【輸液ポンプの物品管理をおこなう】【治療に関する情報共有・提供をおこない,家族を含めた多職種と連携する】【学会や国内会議でNPの活動を発表する】の8カテゴリーが抽出された.
【結論】
海外のNurse Practitionerの小児がん患者への実践と役割は,医療的処置や診療行為にとどまらず,多岐に渡っていた.小児がん患者におけるわが国の診療看護師(NP)の役割として,がん治療における高度な医療的知識や技術を伴い,入院から退院後まで継続して患者を支えることが期待される.
Key Words:小児,診療看護師,小児がん,実践,役割