【緒言】
高齢者の高熱は,重篤な感染症の兆候であることが多く,重症転化する前にいかに迅速かつ的確な診断と対応
が行えるかが重要となる.診療看護師(NP)は,患者への的確なアセスメントの実施,その結果に基づいた必
要な医療的処置も行いつつ,患者の「症状マネジメント」を行うことが期待されている.今回,診療看護師
(NP)が,入院中の発熱高齢患者に対し,症状マネジメントを行ったことで重篤転化の予防に繋がった症例を経
験したため報告する.
【症例】
99歳,女性,不安定狭心症で入院.入院経過より退院調整開始となったが,第6病日に嘔吐,発熱出現.担
当看護師より「誤嚥を疑っているが気になるため一緒に看てほしい」と相談を受け介入開始.診療看護師(NP)
は,臨床推論を行い急性胆嚢炎が疑われたため主治医に報告.担当看護師と共に対応した.同日,急性胆嚢炎の
診断で抗菌薬加療,percutaneous transhepatic gallbladder drainage (PTGBD)チューブが挿入され転科と
なった.
【結論】
診療看護師(NP)は,発熱のある入院高齢患者に対して,症状マネジメントにより,重症転化する前に対応
するという重要な役割を担っていた.
Key Words:高齢者,発熱,診療看護師(NP)
【目的】
診療看護師(NP)が介入した急性StanfordA型大動脈解離(以下, A型解離)に対する緊急手術の術後成績
について明らかにされていないため,後方視的に調査をおこなった.
【方法】
A病院で2020年4月1日から2021年9月30日までにA型解離に対して実施した緊急手術のうち,第一助手
をNPが行った患者をNP群,医師が行った患者をDR群とした.後方視的に患者属性,手術データ,術後管理
項目,在院日数等を調査した.
【結果】
患者の内訳はNP群32名,DR群24名が対象となった.両群の術式の内訳(NP群 vs DR群)は弓部大動脈
置換術(n)(25 vs 5),上行大動脈置換術(n)(5 vs 17)であった.手術時間(分)(373.7±106.7 vs 316.0
±95.6:p=0.041)はNP群が有意に長かった.人工呼吸器管理期間(時間)(39.7±29.9 vs 55.2±63.4:
p=0.53),在院日数(day)(18.8±6.9 vs 21.9±8.8:p=0.181),術後合併症発生に関しては両群に有意差を
認めなかった.
【結論】
NP群では弓部大動脈置換術が多く,手術時間が長かった.しかし,術後管理項目に関しては両群に有意差は
なく,医師のみで周術期管理を行う場合よりもNPを加えたチームで患者管理を行うことで,高難易度手術の術
後でも患者の術後QOLを低下させずに管理を行うことが可能である.
Key Words:診療看護師(NP),急性大動脈解離,術後管理
【緒言】
従来,中心静脈カテーテル(central venous catheter;以下CVC)の留置には鎖骨下静脈や内頸静脈が用い
られていた.しかし,CVC挿入時の気胸などの重篤な合併症が報告されるようになった.末梢挿入型中心静脈
カテーテル(peripherally inserted central catheter; 以下PICC)はCVCと違い,腕の表在の静脈に挿入され
るため,気胸や血胸は起こりえないとされており,臨床現場に急速に普及しつつある.
当院では診療看護師(NP)が血管穿刺用超音波装置を使用しベッドサイドで上腕へのPICC挿入を実施して
おり,現在ではCVCの第一選択となっている.
【目的】
初期研修医へのPICC挿入手技指導の実際に加え,各手技におけるlearning curve,挿入時合併症について検
討し,習得困難な段階を明らかにするとともに,指導の質の向上について考察する.
【方法】
2021年10月から2021年12月までの期間に,当院で診療看護師(NP)の指導の下,初期研修医がPICCを
挿入した15例を対象とし,これらの症例の成績および各手技における所要時間,挿入時合併症について評価を
行った.
【結果】
PICC挿入の各手技はおおむね9回目から時間短縮を認め,最終的には挿入までの時間は1/2まで短縮するこ
とができた.挿入時合併症として,動脈誤穿刺を1例,ガイドワイヤー通過困難を1例認めたが全例挿入できた.
【結論】
PICC挿入に対する指導とlearning curveについて検討を行った.
挿入手技の習熟に伴い,所要時間は短縮し.9例目から時間短縮が著明となった.今後は精度と効率の上がる
ところに教育の重点を置き,指導方法の構築を行っていく.
Key Words:PICC,learning curve,診療看護師(NP)