【目的】
本研究の目的は,Collaboration and Satisfaction about Care Decisions (CSACD)日本語版を参考に作
成した尺度を用いて,看護師は診療看護師(NP)とどの程度協働できていると考え,その協働にどの程度満足
しているのかを明らかにすることである.
【方法】
診療看護師(NP)が所属する1施設の看護師201名を対象に,CSACD日本語版を参考に作成した尺度を用
いて,看護師が捉える診療看護師(NP)との協働と満足の程度を初期研修医と比較した.また,看護師の属性
による検討を行った.
【結果】
回収率は49.2%で男性19名,女性80名から回答が得られ,看護師経験年数の平均は8.43±6.20年であった.
診療看護師(NP)の協働得点は初期研修医と比較して有意に高く,項目別では「ケア計画」「自己主張」「意思決
定の一致」「協働の程度」で有意差を認めた(p<0.05).一方で,「コミュニケーション」「意思決定の責任の共
有」「意思決定の際の協調性」では有意な差を認めなかった.また,満足得点は,診療看護師(NP)と初期研修
医で有意な差を認めなかった.
【結論】
意思決定の際の診療看護師(NP)と初期研修医の協働得点に有意な差が見られた.しかし,満足得点に有意
な差は見られなかった.診療看護師(NP)の協働に対する看護師の満足度を高めていくためには,顔が見える
関係性を築いていく必要があることが示唆された.
Key Words:診療看護師(NP),NP,協働,満足
【緒言】
チーム医療推進の方策として診療看護師(NP)の導入が拡大している1).
米国のNurse Practitionerが提供する医療の質に遜色はなく,患者教育や患者ケアにおける患者満足度は医師
より高い5)6)7).当院では診療部に所属し,幅広く医師の診療をサポートしている.そこで診療看護師(NP)導
入前後でどのように治療成績へ影響を与えるかを検討したので報告する.
【対象と方法】
2015年~2020年の当科緊急,準緊急手術患者130名を対象に,診療看護師(NP)導入前後でアウトカム
(1.緊急症例数,2.治療開始までの時間,3.入院日数,4.月平均の医師休日取得日数,5.有害事象)を比
較する.
【結果】
診療看護師(NP)導入前/後で比較した.緊急症例数は年間19.8件/25.5件,発症~治療開始は876.5±
785.3分/479.0±23分,当院到着~治療開始までは159.7±91.3分/80.7±12.8分となった.また入院日数
(集中治療室滞在)は20.9±13.9日(6.5±6.4日)/22.3±11.4日(5.6±3.1日),医師休日数は4.41±2.1
日/4.62±3.6日となった.
【結論】
心臓血管外科における診療看護師(NP)導入は,緊急症例の増加や治療開始時間などの短縮につながる.
Key Words:診療看護師,ナースプラクティショナー,心臓血管外科,チーム医療,緊急手術
【目的】
米国小児Nurse Practitioner (以下NP)の臨床推論の過程や看護実践の内容を明らかにし,今後日本で活動
する小児診療看護師(NP)の看護実践に示唆を得る.
【方法】
CINAHL with Full Textを用いて米国の過去10年間の文献を検索し,7件の文献を抽出した.文献から[NP
が行った臨床推論]や[NPが行った看護実践]に該当する記述箇所を抽出し,コードとした。抽出したコード
を2名の小児看護研究者とともにカテゴリー化,分析を行い妥当性を高めた.
【結果】
分析の結果【症状の始まりと現在の症状を確認する】【成長発達段階を考慮する】【患者や家族の過去の情報を
確認する】【感染症を疑う】【症状の見落としがないよう系統別レビューに沿って身体所見を確認する】【電話や写
真メールで児の状態を確認する】【焦点を絞ってさらに情報収集を行い,緊急性の判断や緊急時の対応を行う】
【患者の年齢や問題となる症状から鑑別疾患を挙げる】【症状と過去の情報や文献を基に鑑別診断や除外診断を行
う】【根拠となるツールを活用して臨床推論を裏付ける】【NPの判断で検査・治療を行い結果を判断する】【専門
家と連携・相談する】【患者と家族の価値観やこれまでの生活様式にそってケアや情報提供を行う】の13カテゴ
リーが抽出された.
【結論】
医師と米国小児NPとで臨床推論の過程は共通していた.看護実践で培った視点に加え,医学的知識・技術を
持ってケアを行うことがNPによる看護実践の特徴である.
Key Words:小児,診療看護師,文献検討,臨床推論,看護実践
【目的】
診療看護師(NP)の精神的健康度の実態を明らかにし,レジリエンスと首尾一貫感覚との関係性を明らかに
する.
【対象と方法】
全国の診療看護師(NP)で協力の得られた者を対象とし,精神的健康度測定尺度(GHQ),レジリエンス測
定尺度(RSR),首尾一貫感覚(SOC)測定尺度,及び,各属性を問う自作質問票による無記名自記式調査を行
い,分析した.
【結果】
質問票を診療看護師(NP)242名に郵送し,103名から回答を得た.RSR合計点は79.51(±9.27),SOC
合計点は45.33(±6.33),GHQ合計点は2.03(±2.31)であった.GHQを区分点で2群に分けた精神的健
康群と精神的不健康群では,「RSR合計点」,「SOC合計点」,「把握可能感」等に有意差を認めた.「RSR合計点」
と「職務満足度」に相関を認めた.GHQ合計点を目的変数とした重回帰分析では,「SOC合計点」,「職務満足
度」等に影響要因を認めた.
【結論】
診療看護師(NP)の8割が精神的健康群に分類され,特に看護師と比較して高い傾向にあった.2割の精神的
不健康群において,「把握可能感」「レジリエンス」を高める取り組みが効果的であると考えられた.精神的健康
度には,「レジリエンス」は「職務満足度」を介して影響し,「首尾一貫感覚」は独立して影響する関係性が明ら
かになった.
Key Words:診療看護師(NP),精神的健康度,レジリエンス,首尾一貫感覚
【背景と目的】
診療看護師(NP)による末梢挿入型中心静脈カテーテル(peripherally inserted central catheter:PICC)
挿入の安全性の報告は検索し得る限り1編のみであり,その安全性についての検討は十分とは言えない.また,
挿入血管部位における安全性の報告もみられない.以上より,診療看護師(NP)が実施したPICC挿入の安全
性を報告するとともに,挿入血管部位による安全性を検討した.
【対象と方法】
2018年10月1日から2020年11月5日までに,診療看護師(NP)がPICC挿入した97症例を対象とし,
PICC挿入時項目(手技時間,穿刺回数,留置成功率,挿入時即時型合併症の有無),PICC留置後項目(留置期
間,カテーテル関連血流感染(catheter related blood stream infection:CRBSI)の有無,抜去理由)の検討
を行った.さらに,対象にpropensity score matchingを施行し,尺側皮静脈穿刺群23例と上腕静脈穿刺群23
例に割付し,各項目についても比較検討を行った.
【結果】
手技時間中央値は13(2-48)分,平均穿刺回数は1.14±0.406回,留置成功率は100%,挿入時即時型合併
率は3.09%(カテーテル通過不良2例,動脈穿刺1例),留置期間中央値は13(1-101)日,PICC抜去理由は
治療終了が74%,CRBSI発生率(カテーテル日数あたり)は2.56%であった.尺側皮静脈穿刺群と上腕静脈穿
刺群の比較においてはいずれのPICC挿入時項目や留置後項目においても有意差はみられなかった.
【結論】
診療看護師(NP)によるPICC挿入は安全に施行可能である.さらに上腕静脈穿刺は尺側皮静脈穿刺と比較
し安全に施行可能である.
Key Words:診療看護師(NP),末梢挿入型中心静脈カテーテル(peripherally inserted central catheter:
PICC),尺側皮静脈,上腕静脈,合併症