2008年に本邦での診療看護師(NP)教育がスター
トし,12年が経過しました.
この間に,500 名近い診療看護師(NP)=日本NP
教育大学院協議会が認定した修士課程を修了し,同協議
会が実施するNP資格認定試験に合格した者=が誕生し,
毎年,その数は増加しております.
日本NP教育大学院協議会(以下,NP協議会という)
の「10年間の歩み」については,すでに日本NP学会
誌に報告しております.
12年が経過した今,医療に関する技術が目まぐるし
く発展・進化する中で,当初設定した診療看護師(NP)
の養成課程のカリキュラムが時代・社会のニーズを反映
したものであるかどうかを見直す時期ではないかと考え
ております.
NP協議会は,養成教育開始に先立ち基準となるカリ
キュラムを設定するにあたり,「診療看護師(NP)に
必要とされる能力(コンピテンシー)」として表1に示
す7つの能力を設定しました.
【目的】
小児NPの活動に対する看護師とスタッフの満足度とNPに対する期待を明らかにする.
【方法】
調査は平成27年8月~9月に実施した.対象者は重症心身障がい児(者)施設の看護師と介護福祉士等のス
タッフとした.質問項目は属性,小児NPの活動に対する満足度など計24項目で,回答は5段階リッカート法で
求め得点化した.分析はSPSS ver.25を用いて記述統計とMann-Whitney U検定を行った(有意水準5%未満).
【結果】
分析は看護師30部,スタッフは13部を対象とした.看護師全体では「NPに判断や処置等の質問がしやすい」
「NPは困った場面で早急に対応してくれる」「NPは知識や技術が優れている」「NPは看護師やスタッフによく指
導している」等4項目で満足度が高かった.看護師経験年数20年以上群は,「NPは1年目・2年目の研修医と比
較して同様のスキルがある」「NPは困った場面で早急に対応してくれる」「NPは一緒に働きやすい」の3項目で
20年未満群より高い満足度であった(p<0.05).スタッフは,「NPの患者に対するケアに満足している」「NP
の患者に対する態度に満足している」「NPと医師の連携がとれていると思う」等の4項目が高かった.
【結論】
看護師・スタッフは,NPの実施する看護や医療的介入などの活動に満足し,NPを相談相手として信頼して
いることが示唆され,NPの「活動の拡大」,「特定行為の実施」「医療の質の向上に関する活動」などを期待して
いた.
Key Words: 小児NPの活動,看護師,スタッフ,満足度,期待
【目的】
愛知医科大学病院では,2015年から診療看護師(NP)の実践が開始し,同年に診療看護師(NP)対象の卒
後臨床研修要項が作成された.しかし,臨床判断に基づいた診療の能力評価が主となり,診療看護師(NP)の
実践に対する評価が無い事が課題であった.そこで,1年目・2年目の診療看護師(NP)に対して,診療看護師
(NP)の実践に必要な能力についても評価する為にNP到達目標を新たに作成し評価を行う事した.
【方法】
卒後臨床研修要項と評価表を見直し,2015~2017年度までの研修内容を見直し,NP到達目標と評価表を新
たに作成した.
【結果】
NP到達目標と評価表を作成し,症例プレゼンテーションと評価表を用いた評価を2018年度より開始した.
これにより,診療看護師(NP)1年目・2年目各々に対する課題が明確となった.そして,診療看護師(NP)
の高度実践看護を追求する良い機会となった.
【結論】
今回の結果から,診療看護師(NP)の実践評価による実践能力の保証を示す事が重要という事が示唆された.
作成したNP到達目標と評価表を用いた評価を行う事で高度実践看護師としての診療看護師(NP)の実践に
対する評価が受けられ,課題を明らかにする事ができる.また,診療看護師(NP)の実践能力と安全な実践内
容の提供の保証に繋がる.
Key Words: 診療看護師,卒後教育,NP到達目標,症例プレゼンテーション
【目的】
高度急性期病院における診療看護師(NP)の活動・役割をNP,医師,看護部長,看護師への半構成的インタ
ビュー調査により明らかにする.
【方法】
全国6カ所の病院のNP,医師,看護部長,看護師各5名に半構成的インタビューを行った.インタビュー内
容から逐語録を作成し,コードを抽出し,質的帰納的に分析した.
【結果】
NPは,【患者へのタイムリーな医療の提供】をし,医療スタッフの教育者および相談者として活動していた.
NPはチーム医療のコーディネータとしての役割を果たしていると認識していた.
医師は,NPを【医師のパートナー】として評価していた.また,医師は【NPの実践力の向上】,【NPとして
のアイデンティティの確立】の必要性を指摘した.
看護部長は,【医師との協働による医療の質の向上】に貢献していると評価していた.また,NPが看護師に質
の高い教育をし,組織内で【自律的な役割発揮】をしていく必要性を指摘した.
看護師は,NPは医師と看護師の視点で実践していると認識していた.また,看護師の何でも話せる【身近な
相談者】と捉えていた.
【結論】
各医療スタッフは,NPが病院でのチーム医療の推進に寄与することを期待していた.患者のQOLの向上の
ために,自律した実践および組織内におけるNPの役割と立場を明確にしていく必要がある.
Key Words: 診療看護師(NP),役割と活動,期待
【背景/目的】
脳卒中主体の脳神経疾患センターで診療看護師(NP)により実施された特定行為を集計・分析し,本領域に
おける特徴について検討する.
【対象/方法】
2019年度の連続3か月間に,脳神経疾患センターへ入院した114例(脳卒中71%)に対し実施された特定行
為を対象とし,各回数・所要時間を検討した.
【結果】
9区分・17行為(242回)が実施された.侵襲的陽圧換気設定変更が64回(26%),気管カニューレ交換31
回(13%),創部ドレーン抜去30回(12%)等が高頻度で,最長1回所用時間は,画像検査時鎮静目的の抗不
安剤臨時投与(45分)であった.
【結論】
脳卒中主体の脳神経疾患領域の特徴として,呼吸器関連行為の頻度が高く,画像検査時鎮静剤投与の所用時間
が長い.本領域に携わる診療看護師(NP)や,特定行為研修内容検討時の参考資料として有用と思われる.
Key Words: nurse practitioner,特定行為,チーム医療,脳卒中,脳神経外科